せきは体を守る防衛機能です。
人の体には有害なモノを見つけると体外に出してしまおうとするはたらき(防衛機能)が備わってます。
せきもその1つ。のどの奥から肺までの空気の通り道(気道:きどう)に備わった、人の防衛機能なんです。
私たちは肺で酸素を取り込んでいますが、外の空気をそのまま呼吸しているために気道に異物が入り込んでしまいます。
小さな異物は気道で分泌されている粘液にからめとられ、タンとして口から捨てられます。
ホコリだけでなく、細菌や毒物などが肺から侵入するのを防いでいるんです。
また、気道を強く刺激する大きな異物や有害な物質が入り込むと、瞬時に排出しようとしてせきが出ます。
煙を吸い込んでしまったり、飲み物や食べ物が間違って気道に入ってしまうと激しいせきが出ますが、気道の防衛機能が働くからなんですね。
せきによって吐き出される空気(呼気)のスピードは新幹線並みといわれています。時速300km、風速になおすと80mにもなります。
台風をはるかに超える強い風で、のどの奥にはりついたタンを吹き飛ばしてくれるんですね。
空気(呼気)をためた肺を強い力で一気に収縮させ、爆風のように空気を吐き出すのがせきの仕組み。
肺を強く圧迫するために激しく筋肉が収縮します。その時のチカラは、お年寄りだけでなく若い人でもせきでろっ骨を折ってしまったという報告があるほどです。
1回せきをするために必要なエネルギーは2キロカロリーといわれています。
1日に1000回せきをすると2000キロカロリーものエネルギーを消耗してしまいます。くしゃみや発熱があると、さらにエネルギーを消耗していきます。
かぜの時には体力を消耗しないようせきを適切にとめたり、消耗したエネルギーを回復できるよう、十分な栄養補給を心がけましょう。
せきをおさえたいとき、一番確実な方法はせき止め薬を服用すること。
のど飴をなめる人もいるようですが、せきを止める成分の入った医薬品のど飴でなければ効果は期待できません。
では、せき止め薬にはどのようなものがあるんでしょうか?
気道が刺激を受けると脳(せき中枢)に信号が伝わり、せきをして異物を排出するよう指示が出されます。
せき止め薬には、せき中枢に作用するタイプと気道に作用するタイプの2種類があります。
せき中枢は刺激に反応して「せきを出せ」と指示するところですが、せき中枢に働くタイプの成分は、せき中枢の反応を鈍らせる作用をもっています。この反応が鈍ると、弱い刺激ではせきの指示が出されないようになり、結果的にせきを抑えることができます。
また、かぜやアレルギーで気道が炎症をおこすと、はれて気道が狭くなり、タンや異物の刺激を受けやすくなります。
特に気管支(気道が左右の肺に分かれる部分)に働くタイプの成分は、気管支を広げて通りを良くする作用をもっています。
気管支が広がると、タンを出しやすくなるだけでなくタンなどによる刺激もやわらぎ、せき中枢に送られる信号が弱まってせきが出なくなるのです。
せき止めの成分は、市販のかぜ薬やせき止め薬に配合されています。一般に、中枢に作用する成分や気管支に作用する成分によって、優れたせき止め効果を示します。
熱やせき、のどの痛みなどかぜをひいてさまざまな症状が同時に現れたときには総合感冒薬を服用するのが一般的ですが、せきの症状だけが残ってしまうような場合があります。こんなケースでは、不要な成分が入っていないせき止め薬に切りかえて治療するのが理想です。
かぜ薬やせき止め薬は、かぜに伴う苦痛な症状をおさえてくれます。かぜ薬と同様に、せき止め薬にも眠けをもよおす成分が配合されていることがあるので、車の運転をする時などは特に注意が必要です。
その他、薬の飲み合わせなど思わぬトラブルを避けるため、服用の前には必ず添付文書の「使用上の注意」を確認しましょう。また、薬を服用してもせきの症状が長引く場合には、医療機関を受診し、原因を確認することが大切です。